骨粗しょう症とは
骨強度(骨密度と骨質)が何らかの原因によって低下、それによって骨が脆弱化し、骨折しやすくなる病気のことを骨粗しょう症と言います。ちなみに骨強度を構成する骨密度とは、骨に含まれるカルシウム等のミネラルの量(骨量)が単位面積あたりでどれくらい含まれているかを数値化したものです。また骨質は、建築で言うところの鉄筋にあたるものです(骨密度はコンクリートにあたります)。強くしなやかな骨を維持するには骨質の存在も重要とされていますが、骨密度のような数値化は現時点ではできていません。
主な症状ですが、骨が脆くなると、ちょっとした転倒で手をつく、くしゃみをした等、少しの衝撃でも骨折するようになります。また背骨(椎骨)が体の重さに耐えられなくなることによる圧迫骨折などもみられるようになります。骨粗しょう症の患者さまでよくみられる骨折部位は、背骨、手首、太ももの付け根(大腿骨近位部)、腕の付け根と言われています。なお椎体の圧迫骨折が起きると、腰や背中に痛み、身長低下、脊柱後弯変形などが現れるようになります。また大腿骨近位部を骨折すると寝たきりになりやすくなるので要注意です。
発症の原因については、大きく2つに分かれます。ひとつは原発性骨粗しょう症です。これは原因が病気など特定したものではなく、閉経や加齢、栄養不足(極端なダイエット 等)、慢性的な運動不足などが引き金となって発症する骨粗しょう症です。もうひとつが続発性骨粗しょう症で、何らかの病気に罹患されている患者さまや薬剤の影響(ステロイド薬の長期投与等)など特定した原因があって発症するようになります。ちなみに日本人の全骨粗しょう症患者さまの約9割の方が原発性骨粗しょう症です。その中でも閉経後骨粗しょう症の患者さまが多く、同疾患の8割程度は女性が占めるとも言われています。
なお男性では、加齢によるカルシウム吸収率の低下に伴う骨量の減少によって引き起こされる老人性骨粗しょう症によるケースが多いです。また男性でも女性でも年齢が高くなればなるほど有病率は上昇するようになります。
検査について
背骨(脊椎)の圧迫骨折が疑われる場合は、単純X線撮影を行い、骨折の有無を確認していきます。また他の病気の可能性を調べるための血液検査をすることもあります。なお発症の有無を確認するための検査として最も行われているのが骨密度検査です。これは骨密度(骨の強さ)を測定するための検査になります。この場合、若年者の平均骨密度とされる若年成人平均値(YAM値)と検査を受けた方の骨密度を比較します。その結果、脆弱性骨折のない状態でYAM値と比べて70%以下と判定された場合に骨粗しょう症と診断されます(脆弱性骨折がある場合は80%以下)。
なお女性に関しては、骨粗しょう症の症状がないという場合でも40歳を過ぎたら骨密度検査を定期的に受けられることが望ましいです。
治療について
検査の結果などから骨粗しょう症と診断を受けると治療を速やかに行います。骨粗しょう症は、骨の生活習慣病とも言われますが、まず生活習慣の見直し(食事療法、運動療法)が基本です。
食事療法では、骨強度を低下させないよう骨形成に役立つ、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKを多く含む食品を摂取します。また喫煙をされる方は禁煙をし、多量の飲酒やカフェインを多く含む飲み物は控えます。さらにインスタント食品もとりすぎないようにします。このほかにも運動をすることは、骨に負荷をかけることになります。これは骨強度を上げるのに適していますので、日常生活に取り入れてください。内容としては、ウォーキングやジョギングなど無理をしない程度の有酸素運動で十分ですが、できるだけ毎日行うようにしてください。また転倒防止のためのバランス訓練や筋力トレーニングも行います。
上記の環境を整えたうえで、併せて薬物療法も行っていきます。この場合は患者さまの状態に合わせ、破骨細胞に作用する骨吸収抑制薬(ビスホスホネート、SERM 等)、骨形成を促進させる効果がある骨形成促進薬(PTH製剤、抗スクレロスチン抗体製剤)、腸管からのカルシウム吸収を向上させる骨代謝調整薬(活性型ビタミンD3製剤)などが用いられます。